【本  文】


道光明朗超絶せり 清浄光仏とまうすなり


ひとたび光照かぶるもの 業垢をのぞき解脱をう


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【現代語訳】

 阿弥陀如来のさとりから放たれる光明が、光り輝くようすは、すぐれていてとても諸仏の及ばないところである。
それゆえ、清浄光仏と申し上げるのである。一度この光明のお照らしをうけるものは、即座に悪行煩悩の垢が除かれ、
浄土の往生して迷いの世界を脱し、仏のさとりを得べき身となるのである。

【語  釈】

①明朗  明るく輝くこと。開けて明るいありさま。あいまいさがなく、明らかで、ものがよくわかり、はっきり認証できること。
②清浄光  衆生の煩悩を除き、清らかにしてくださる弥陀の光明。諸仏はすべて煩悩をはなれて清浄である。
 しかし悪行煩悩の衆生を清浄にし、解脱を得しむるのはただ弥陀如来のみである。
 〈清浄光、歓喜光、智慧光〉  この三光によって衆生往生の因である信心が得られるが、この三光の関係について、種々の見方がある。
 (一)三光を貧瞋痴(とんじんち)の三毒に当て、清浄光は貧欲、歓喜光は瞋恚を、智慧光は愚痴の病を治療するものとする見方。
 (二)三光を本願の三信である至心、信楽、欲生に当てる見方。
 (三)三光を体、相、用(ゆう)に当て、智慧光は、仏智を信ずる信心の体、歓喜光は往生の定まったことを喜ぶ信心の相、
 清浄光は、往生を決定する信心の用と見る。
 そして、歓喜光、智慧光を後にして、信心の用である清浄光を先に讃えられるのは、罪はどれほどであろうとも、
 煩悩の縄を断ち切って、さとりを得させてくださるはたらきの大きさを知らせるためであろうといわれている。
 今は、三光について三つの見方がある中で、三光を体、相、用に当てる見方がよいと思われる。
 清浄光によって、貧欲、瞋恚、愚痴などのすべての煩悩を除きさとりを得るというのが今の和讃。
 清浄光によって貧欲のみを除くとみるのは、不適当でしょう。 
③ひとたび光照かぶるもの  一度、如来の光明のお照らしを受けた者はということ。
 光明に照らされて悪業煩悩が除かれるのは、何度も照らされて除かれるのではまく、信心がおこったとき、
 たちどころに迷いの世界に繁がれる因が切られる。
④業垢  悪業煩悩のこと。 悪業は心身を染汚((ぜんお))するので垢(く)という。煩悩は心を惑わせ汚すはたらき。

【講  読】

 この一首は、清浄光を讃嘆されます。
 「大経和讃」に「無碍光仏のひかりには、清浄・歓喜・智慧光、その徳不可思議にして、十方諸有を利益せり」とあり、
一無碍光が、清浄光、歓喜光、智慧光の三光となって衆生を利益するとあります。
それで今の一首が清浄光、次に歓喜光、つづいて智慧光を讃嘆されていますから、これら三首が一組となって、
光明の衆生利益を讃えられたものとみられます。
 「道光明朗超絶せり」、道光の「道」は「菩提」の訳語で、さとりの智慧のこと、道光は阿弥陀如来のさとりの智慧の光明です。
その光明は「明朗」である。明るく広々と開かれた、物事がはっきりわかるような明るさで、諸仏の光明に超えすぐれていると讃嘆されます。
超は超勝、絶は勝絶の意で、二字ともに超え勝れたことを意味します。この第一句が清浄光仏と呼ばれる理由を表しています。
 「清浄光仏とまうすなり」、智慧の光明は、私たちの三毒の煩悩のすがたを照らします。
私たちの煩悩心の底には、我執があるといわれます。我執によって、自他、好嫌、善悪などを分け隔てていきます。
そして、好きなもの、都合のよい者には、どこまでも引きつけられる、それが貧欲でしょう。
いやなもの嫌いなものにはどこまでも反発する、これが瞋恚。我執のすがたに気づかないのが愚痴でしょう。
この三毒のすがたを照らし出し、懺悔(さんげ)、慚愧(ざんぎ)せしめ、五逆十悪の凡夫の業垢を除き清浄にできるのは、
ただ弥陀のみである、それで弥陀如来を清浄光仏と名づけられます。
 「ひとたび光照かぶるもの、業垢をのぞき解脱をう」、この光照を蒙りはじめた刹那(せつな)に、業垢が除かれ、
解脱を得る身の上とさせていただくと讃えられます。古写本には「業垢」の左訓に「悪業煩悩」等とあり、
「解脱をう」の左訓に「解脱というは仏果に至り仏になるをいふ」とあります。聖人のおこころを伝えるものとして注意したいと思います。
 ともあれ、罪はどれほどあろうとも、煩悩界の縄を切ってくださるものは如来の清浄光です。
先には「清浄光明ならびなし……一切の業垢ものぞこりぬ」とあり、今は「業垢をのぞき」とあります。
「業繋(ごうけ)」も「業垢(ごつく)」も同じ意趣を表していると思われます。
                                                                     黒田覚忍先生
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